むかしむかし あるところに 4ひきの こうさぎが おりました。
なまえは それぞれ
フロプシー 、
モプシー 、
カトンテル 、
ピーター です。
4ひきは
おかあさん と いっしょに とってもおおきな モミのきの したにある あなのなかに すんでいました。
あるひの あさ、
あなうさママ が いいました。
「
さあ おまえたち、 のはらのなかや こみちのさきで あそんでらっしゃい。
でも、 マグレガーおじ の おにわには いっちゃダメよ。
むかし おとうさんが そこで ひょんなことから マグレガーおじ に つかまって パイに されたんだから。 」
「
いってらっしゃい、 きを つけるのよ。
おかあさん 、 るすに してるから。 」
それから
あなうさママ は かごと かさを てにもって、 もりの むこうの パンやさんへ むかいました。
かったのは 1きんの くろパンと ぶどうパンを 5つです。
フロプシー と
モプシー と
カトンテル は とっても いいこでしたので、 こみちを くだって クロイチゴつみに でかけました。
けれども
ピーター は ひどく やんちゃでしたので、 そのまま
マグレガーおじ の おにわに いちもくさん、 いりぐちの さくの したを むりくり くぐりぬけたのです!
すぐさま レタスと インゲンを かじって おまけに ハツカダイコンまで。
すると どうも きぶんが わるくなったので おくすりの パセリを さがすことに しました。
ところが キュウリの なえばこを まわったところで でくわしたのが、 なんと
マグレガーおじ !
マグレガーおじ は よつんばいで キャベツのなえを うえていたのですが、 とびあがって
ピーター を おいかけます。
くわを ふりふり さけぶのです。
「
まてえ、 ぬすっと! 」
ピーター は もう びっくりして ふるえあがって にわじゅうを かけまわりました。
それというのも いりぐちが どこにあったのか わからなくなったのです。
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しおり ] ベアトリクス・ポッター-あなうさピーターのはなし(1 / 4)
しかも キャベツばたけで くつを かたっぽ、 ジャガイモばたけで もうかたっぽを なくしてしまいました。
くつも ないので よつあしで はしると ぐんぐん はやくなって、 うまくいけば にげられたと おもうのですが、 うんわるく スグリの あみに つっこんでしまい、 うわぎの おおきな ボタンが ひっかかってしまったのです。
ちなみに あおの うわぎで しんちゅうの ボタンつき おろしたての ものでした。
ぼくは もう しぬんだな、
ピーター は おおつぶの なみだを ながしました。
でも そのなきごえが たまたま やさしい すずめたちにも きこえて、 そして あわてて そばに とんできて あきらめないでと いうのです。
マグレガーおじ が やってきて もってきた ふるいを
ピーター の うえから ぱっと かぶせようと しましたが、
ピーター は すんでのところで うわぎを ぬぎぬぎ あとに のこして にげだしました。
そして ものおきごやに かけこんで じょうろのなかに とびこみました。
とってもいい かくればだと おもったのに みずが たくさん はいっているなんて。
マグレガーおじ には まるわかりでした。
ピーター は ぜったい ものおきごやの どこかに いる。
もしかすると うえきばちの なかかもしれない。
やがて そろりと もちあげて ひとつずつ なかを みるのです。
まさに そのとき
ピーター が くしゃみを ――「
はっくしゅん! 」
マグレガーおじ が たちまち ちかづきます。
あしで ふみつけられそうに なりましたが、
ピーター は まどの そとへと とびだして ついでに うえきを 3つ たおしました。
まどが ちいさすぎたので、
マグレガーおじ も
ピーター を おいかけるのを あきらめて のらしごとへ もどることに しました。
ピーター は ほっとして こしを おちつけます。
いきも きれぎれ、 こころも ぶるぶる、 どっちへいったら いいのか ちっとも わかりません。
しかも じょうろのなかに いたので もう ずぶぬれです。
しばらくして うろちょろ しはじめましたが、 とぼとぼ ―― とぼとぼ ―― ゆっくりと あるいて きょろきょろ。
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しおり ] ベアトリクス・ポッター-あなうさピーターのはなし(2 / 4)
かべに ドアを みつけましたが、 かぎが しまっていて したを くぐりぬけようにも ぷっくりした こうさぎの とおる すきまは ありません。
おかあさん ねずみが いしの とぐちを はいったり でたりして きのなかで まっている かぞくに おまめを はこんでいます。
ピーター は そのねずみに いりぐちへの いきかたを ききましたが、 くちに おおきな おまめを くわえていましたので ねずみは なにも へんじが できません。
ただ くびを ふるだけなので、
ピーター は なみだが でてきました。
それから おにわを つっきって かえりみちを さがそうと しましたが、 よけいに まよってしまいました。
やがて
マグレガーおじ が みずくみをする ためいけのところへ たどりつきます。
しろい ねこが きんぎょを じっと にらんでいて ぴくりとも うごきませんが ときたま しっぽの さきが いきものみたいに くねくねと していました。
ピーター は そっとしておくのが いちばんだと おもいました。
いとこの ばにばに
ベンジャミン くんから ねこのことは それなりに きいていたのです。
ものおきごやに もどろうとすると いきなり すぐそばから くわの おとが きこえてきました。
さっくり、 さくさく、 さっくり。
ピーター は しげみのしたを あたふたと はしりまわります。
けれども なんということも ないので すぐに でていって ておしぐるまの うえへ のぼり ようすを うかがってみました。
まず みえたのが タマネギばたけを たがやす
マグレガーおじ 、
ピーター には せなかを むけていて なんと そのむこうに いりぐちが あるのです!
ピーター は おとも たてずに ておしぐるまを おりて ぜんそくりょくで はしりだしました。
クロスグリの しげみのうら まっすぐ みちを すすみます。
かどのところで
マグレガーおじ に みつかりましたが
ピーター は かまいません。
いりぐちのしたに すべりこんで とうとう にわのそと、 もりに はいれば あんぜんです。
マグレガーおじ は ちいさな うわぎと くつを ぼうに ひっかけ からすよけの かかしに しました。
ピーター は そのままずっと はしりっぱなしで ふりかえることもなく おおきな モミのきの おうちまで かえりました。
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しおり ] ベアトリクス・ポッター-あなうさピーターのはなし(3 / 4)
もう くたくたなので うさぎあなの ふかふかした やわらかい つちの じめんに ねっころがると まぶたが すぐに おちます。
おかあさん は おりょうりの さいちゅうで てが はなせませんでしたが、 みにつけていたものは どうしたのかしらと くびを かしげました。
つい このあいだも うわぎと くつを なくしたっていうのに。
なんといったら いいのか、
ピーター は そのひの ばんは ずっと ぐあいが よくありませんでした。
おかあさん は ベッドに ねかしつけ カモミールの おちゃを つくってあげました。
ピーター への おくすりと いうわけです!
「
ねるまえに おおさじいっぱい のむこと。 」
かたや
フロプシー と
モプシー と
カトンテル は ばんごはんに パンと ぎゅうにゅうと クロイチゴを たべました。
(おしまい)
底本:
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翻訳の底本:Beatrix Potter (1902) 'The Tale of Peter Rabbit'
上記の翻訳底本は、著作権が失効しています。
2009(平成21)年11月12日翻訳
2010(平成22)年2月10日修正
2011(平成23)年8月9日微修正
2013(平成25)年9月1日修正
※この翻訳は「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス」(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)によって公開されています。
上記のライセンスに従って、訳者に断りなく自由に利用・複製・再配布することができます。
※翻訳についてのお問い合わせは、青空文庫ではなく、訳者本人(http://www.alz.jp/221b/)までお願いします。
翻訳者:大久保ゆう
2014年3月26日作成
青空文庫収録ファイル:
このファイルは、著作権者自らの意思により、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)に収録されています。
----- (以下、
シン文庫 追記) -----
関係者の皆様、大変ありがとうございました。感謝致します。
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しおり ] ベアトリクス・ポッター-あなうさピーターのはなし(4 / 4)